ビギンでは、毎月第1日曜日の午前10時から12時まで「スマホ・パソコン教室」を開催しています。8月4日に行われた「スマホ・パソコン教室」の様子を東愛知新聞の記者さんに取材していただきました。
【掲載された本文】
スマートフォンが、視覚障害者の社会参加を手助けしている。さまざまな情報を音声化して届けることで、活動の幅が大きく広がっているのだ。東三河視覚障害者自立支援協会「ビギン」のスマホ使い方教室を取材した。 教室は月一度、豊橋市前畑町の市総合福祉センターで開かれている。ビギンは2009年に設立された。視覚障害者と目の見える人たち(晴眼者)でつくるボランティアグループだ。 代表の服部めぐみさんは、生まれつき目が不自由だったが11歳で完全に失明した。ビギンの成り立ちについて「点字やパソコン、白杖などの訓練を受けられる場所が名古屋にも浜松にもあるのに東三河にはなかった。それならば自分たちでつくろう、と考えたのが始まり」と話す。自立を目指す視覚障害者の最初の一歩を支える趣旨から「ビギン」と名付けた。 以前からパソコンの指導はしていたが、スマホの教室を始めたのは数年前からだ。視覚障害者はアイフォーンの使用率が高いという。音声読み上げアプリ「ボイスオーバー」、音声で操作できる「Siri(シリ)」によって、晴眼者同様にスマホを操作できるようになった。 服部さんは「フィーチャーフォン(ガラケー)には、視覚障害者向け専用端末があった。でもアイフォーンのすごいところは、このような機能を標準装備していること。必要な人が使い、不要な人はオフにしておけばいいのだから」と話した。ほかにも、移動時の歩行支援アプリなどを使っている人も多い。歩行者用信号機が赤か青かを教えてくれるアプリもある。「離れたところにいる視覚障害者と会議システムで会話しています。時には会いに行って『あ、オンラインで聞いたのと同じ声だ』となるとうれしい」と服部さんは笑う。 今月4日にあった教室には約10人の視覚障害者が来ていた。最初に覚えたい機能を発表する。「乗換案内」「LINE」「使いやすいアプリ一覧」「SDカードの管理」など、さまざまな声があった。先生役と生徒役のペアになって操作方法を学んでいく。全盲なのに、スマホアプリに詳しくなって、先生役をしている男性がいた。 アイフォーンのコンテンツ読み上げ機能を使うと、アプリの一覧が読み上げられる。ダブルタップすると立ち上がる。音声のスピードも調整できる。 またシリは「今何時か教えて」「自宅に電話をかけて」「◯◯さんにLINEを送って」などという指示が可能だ。LINEの場合だと「どんなメッセージを送りますか」と聞いてくるので、そこでメッセージを話せば、文字になって相手に送られる。生成AIの精度の向上によって、固有名詞以外はスムーズに変換されるという。より専門的にスマホを使いこなしたい人には専門家を紹介するそうだ。 服部さんは「スマホの機能は見えない、見えにくいことを補ってくれる存在。視覚障害者でスマホの機能を知らない人がいる。その差は大きい。近くにいる晴眼者は、特に眼科などは、ぜひこのことを見えない人に伝えたりサポートしたりしていただけたらうれしい。ビギンの活動を紹介してもらえるとありがたい」と語った